レンズの個性について考えます
2019年4月撮影
亡父が家族に隠していた高級カメラが、その没後に何台も発見されました。そのなかから私に分け与えられたのが、中判カメラとNikon F2と何本かの交換レンズです。
中判については、先日、このブログで御披露しました。
もう1台のNikon F2も動く状態を保っていますが、ランニングコストが悩みのタネでほとんど出番がないままでした。そこで、レンズだけでも活用しようと思ってNikon Dfを購入、何度か使ってはみたけれどピントの山を見きれなかったので、練習として撮ったのが、きょう御披露した写真です。
共通データ Nikon Df Nikkor-S Auto 55mm f1.2(1965) ISO100
1枚目 f8 1/250sec
大昔の写真格言で「迷ったらf8」というのがありました。いまのフルサイズ機でも通用すると思って撮ってみました。これぞオールドレンズの味わいみたいなものは無くて案外と素直に写ってしまいます。
2枚目 f2.8 1/30sec
最短撮影距離で撮っています。ここから近寄っていくと容赦なくピンボケですし、被写界深度(ピントの合う厚み)が非常に薄いので、暗いなかでしたが少し絞りました。
3枚目 開放 1/4000sec
旗の真ん中にピントを合わせましたが、はためいているせいで右上の「飛騨」の字は少しボケています。距離は1m以上ありました。同じ条件では、人物の身体の厚み分の被写界深度を得られないだろうことがわかりました。
4枚目 f2.8 1/500sec
木漏れ日のなか、頭上で木の枝が揺れるごとに射し込む光の量がかわっていく不安定な状況で、団子は露出オーバー気味、ペットボトルは露出アンダー気味なんですが、見たいのはボケ味です。ピントは団子に合わせましたが、ペットボトルのラベルはピンボケです。少し絞ったくらいでは、わずか数センチの被写界深度すら得られないことがわかりました。なかなかの難物です。
5枚目 開放 1/1000sec
距離をとればどうかと思って、等身大の人物像を撮ってみました。後ろの茂みがボケて、奥行きを感じさせます。
6枚目 開放 1/1000sec
テスト撮影なのでピンボケは覚悟のうえでした。目鼻と唇まではピントが合っていますが、耳はピンボケです。
ピントを自分の目と手で合わせていると「いま撮影しているのだ」という感慨が胸の奥から湧き上がってきて、シャッター一回ごとの重みがAFとは全然違います。
さて、気分の問題は横に置いて、肝心なのは絵柄です。
もし、写り具合にクセがあったら、それを逆に活かせないかと考えておりましたが、クセがあったとしてもレンズの個性であって私の個性じゃありません。レンズの個性は誰が使っても発揮されます。そんなものを人格に属する個性であると認めるわけにいきませんからね。
私なりの結論は「クセの無い写り方をするレンズ」というものでした。
私の主観ではありますが、ピンボケになった部分の色合いが新しいレンズと異なって見えます。それ以外は、案外とフツーに写ります。フイルムしかなかった時代に設計されたレンズですが、より解像度を要求されるデジタルでも立派に通用したことには感動いたしました。
ときおり、写真撮影の原点に立ち戻るため、このピント合わせも困難なレンズをつけて撮りに出ています。デジタルの時代とは、まったく異なる想いでシャッターを押していたことを思い出させてくれます。