sppc666のブログ

写真とは「真ヲ写ス」こと

思い浮かんだ「呉下の旧阿蒙」

2006年5月~6月撮影

 自前のギャラリーを開設していた時期がありました。場所柄は良かったけれどサッパリ予定が埋まらず三ヶ月目にはやめてしまった、いまでは苦い思い出です。そのギャラリーのこけら落としに来てくださった中に、この女性がいました。モデルとしての経験は皆無だったそうですが、被写体になってみたいキモチはあるとのことでした。

 ちゃんと撮ったら大化けするかも……と、予感して、さっそく電子書籍サイトRopLib向けのモデルになって欲しいと交渉、その一ヶ月後には海で水着撮影をしました。

 その一ヶ月の間に何度か打ち合わせのメールを往復させましたが、細かい部分はぶっつけ本番でした。初対面のときは純朴そのものといった表情でカメラの前に立っていた彼女が、海で水着に着替えると、まさしく大化けしました。前にデニムのジャケットを羽織っていたときには緊張感を隠せなかったのに、ビキニを着ることで度胸が決まったようで、表情には余裕さえ感じました。

 そのとき思い浮かんだのは「また呉下の阿蒙に非ず」という故事成語でした。まるで別人のように思えたからです。キレイに撮られたい、そんな気合いみたいな圧をヒシヒシと感じながら撮影していました。

 グラマラスな彼女の水着写真集は、当時RopLibで注目作品として採り上げられたほど好評を得ましたが、御当人いわく「太っちゃったから」あっさり引退、一作かぎり、彗星のように去って行きました。